「外国人を採用すると助成金がもらえる」——この言い方は、正確ではありません。
採用しただけで支給される制度は、存在しないからです。実務で使えるのは、正社員化・就労環境整備・人材育成といった取り組みを対象とする制度であり、いずれも事前の計画届出と、取り組み後の要件達成が必要です。
この記事では、外国人採用で実際に活用できる3つの助成金を、2026年度の支給額と要件に基づいて整理します。
この記事の結論(2026年7月時点)
- 「外国人を採用するだけ」で出る助成金は存在しない
- 使えるのは正社員化・就労環境整備・人材育成を対象とする3制度
- 人材確保等支援助成金:1制度導入につき20万円・上限80万円。ただし離職率15%以下が要件
- キャリアアップ助成金:2025年度から通常は40万円に半減。80万円は「重点支援対象者」のみ
- 多くの制度で取り組みを始める前に計画届出が必要。後からでは対象外
- 支給は採用から1年以上先。採用コストの補填ではなく、定着投資への還付
「外国人を採用するだけ」で出る助成金はありません
雇用関係助成金の多くは、日本人・外国人を問わず「労働者の処遇改善や雇用管理改善に取り組む事業主」を支援するものです。国籍を理由に支給される制度ではありません。
したがって外国人採用では、次のどちらかを活用することになります。
- 一般的な助成金のうち、外国人にも適用できるもの(キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金)
- 外国人特有の就労環境整備を対象とするもの(人材確保等支援助成金)
いずれも雇用保険の適用事業主であることが前提です。
助成金を採用コストの補填として計画に組み込まない
助成金は、取り組みを実施し、要件を満たし、申請してから支給されます。入金は採用から1年以上先になることが珍しくありません。また、要件を満たせなければ1円も入りません。
採用計画の資金繰りに助成金を織り込むと、想定が崩れます。助成金は「採用費が安くなる制度」ではなく、定着への投資に対する還付と捉えてください。
3つの助成金の全体像
| 助成金 | 対象となる取り組み | 支給額の目安 | 外国人採用との関わり |
|---|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) |
通訳・多言語マニュアル・相談体制などの整備 | 1制度導入につき20万円 (上限80万円) |
外国人特有の事情を対象とする、最も関連の深い制度 |
| キャリアアップ助成金 (正社員化コース) |
非正規雇用労働者の正社員化 | 1人あたり40万円 (重点支援対象者は80万円) |
留学生アルバイトの卒業後正社員化などに活用 |
| 人材開発支援助成金 | 職業訓練の実施 | 訓練経費・訓練中の賃金の一部 | 外国人を含む全労働者が対象 |
① 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
言語や雇用慣行の違いによって外国人労働者が困難を抱えないよう、就労環境を整備した事業主を支援する制度です。外国人採用と最も関連が深い制度です。
支給額:1制度導入につき20万円(上限80万円)
受給要件をすべて満たした場合、1制度導入につき20万円が支給され、上限は80万円です。導入する措置は、下記の1と2が必須。これに加えて3〜5のいずれかを選択します。
| 区分 | 就労環境整備措置 |
|---|---|
| 必須 | 1. 雇用労務責任者の選任 |
| 必須 | 2. 就業規則等の多言語化 |
| 選択 | 3. 苦情・相談体制の整備 |
| 選択 | 4. 一時帰国のための休暇制度の整備 |
| 選択 | 5. 社内マニュアル・標識類等の多言語化 |
対象となる経費
外部の機関や専門家に委託した場合、次の経費が支給対象として考えられます。
- 通訳費
- 翻訳機器導入費(雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要なものに限る)
- 翻訳料(社内マニュアル・標識類等の多言語化を含む)
- 弁護士、社会保険労務士等への委託料(就労環境整備措置に要するもの)
- 社内標識類の設置・改修費(多言語の標識類に限る)
最大の関門は「離職率15%以下」です
受給要件のひとつに、就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が15%以下であることがあります。
つまり、この助成金は「採用したら受け取れる」ものではありません。定着させて初めて受け取れる制度です。採用単価を下げる目的で申請しても、早期離職が続けば支給されません。
あわせて、外国人雇用状況届出を適切に行っていることも要件に含まれます。届出を怠っている場合、助成金は支給されません。
② キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用などの非正規労働者を正社員に転換した事業主を支援する制度です。留学生アルバイトの卒業後の正社員化などに関わります。
2025年度から、通常の正社員化は40万円に半減しました
ここは、古い情報が特に多く出回っている部分です。
2024年度までは、正社員化1名につき80万円(中小企業)が支給されていました。しかし2025年度(令和7年度)の制度変更により、対象者が「重点支援対象者」と「それ以外」に区分されました。2026年度もこの枠組みが継続しています。
| 区分 | 有期雇用 → 正社員 | 無期雇用 → 正社員 |
|---|---|---|
| 重点支援対象者 | 80万円 (第1期40万円+第2期40万円) |
40万円 |
| それ以外 | 40万円 (第1期のみ) |
20万円 |
重点支援対象者に該当するのは、次のいずれかです。
- 雇入れから3年以上継続して就業している有期雇用労働者
- 雇入れから3年未満で、過去5年間に正規雇用労働者として働いた期間が通算1年以下、かつ過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない有期雇用労働者
- 母子家庭の母・父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者など
「最大80万円」と書かれた情報にご注意ください
いまでも「正社員化で80万円」と記載する情報が多数見られますが、2024年度までの制度です。通常の正社員化は40万円、80万円は重点支援対象者に限られます。
なお、留学生アルバイトを卒業後に正社員化する場合、学校卒業後1年未満の新規学卒者は正社員化コースの支給対象から除外されています。この点も見落とされがちです。
2026年4月8日から「情報公表加算」が新設されました
正規雇用労働者への転換等に関する情報を、自社ウェブサイトまたは厚生労働省の「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」に公表した場合、1事業所あたり20万円(大企業は15万円)が加算されます。
公表が必要なのは、転換制度の概要(手続き・要件・実施時期)、直近3事業年度の転換実績数、雇入れから転換までに要した平均期間と最短期間です。
このほかの加算措置(1事業所あたり1回のみ)もあります。
- 正社員転換制度を新たに就業規則に規定して転換した場合:20万円
- 多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)の制度を新たに規定して転換した場合:40万円
③ 人材開発支援助成金
労働者に職業訓練を実施した事業主に、訓練経費や訓練中の賃金の一部を支援する制度です。外国人労働者を含むすべての労働者が対象で、業務に必要なスキル習得の訓練に活用できます。
2026年4月時点で7つのコースがあり、それぞれ訓練の内容や実施形態が定められています。
この制度の訓練を修了させることで、キャリアアップ助成金の重点支援対象者の要件を満たせる場合があります。組み合わせを検討する価値があります。
申請で失敗しないための4つのポイント
① 取り組みを始める前に、計画を届け出る
これが最も多い不支給理由です。多くの助成金では、取り組みの実施日の前日までに計画書を労働局へ提出する必要があります。採用や制度導入を先に進めてしまうと、対象外になります。
検討段階で、早めに労働局またはハローワークに確認してください。
② 申請期限を過ぎない
取り組み後の一定期間内に申請する必要があります。期限を過ぎると受給できません。
③ 支給までの期間を織り込む
申請から支給までは数か月〜1年程度を見込んでください。資金繰りの前提にしないことが大切です。
④ 毎年、要件が変わる
コース・金額・加算は年度ごとに見直されます。2025年度のキャリアアップ助成金の半減、2026年度の情報公表加算の新設が、その典型です。
インターネット上の古い情報を鵜呑みにして準備を進め、申請時に要件を満たしていなかったという失敗が非常に多い分野です。要件が細かいため、社会保険労務士等の専門家への相談をおすすめします。
よくある質問
外国人を採用するだけで助成金はもらえますか
いいえ。「採用するだけ」で出る制度は存在しません。正社員化、就労環境整備、人材育成など、特定の取り組みを行うことが条件になります。
留学生アルバイトも助成金の対象になりますか
卒業後に正社員化する場合、キャリアアップ助成金が関わることがあります。ただし学校卒業後1年未満の新規学卒者は、正社員化コースの支給対象から除外されています。
また、就労環境整備(多言語マニュアルの作成など)を行えば、人材確保等支援助成金の対象になり得ます。こちらは雇用形態を問いません。
人材確保等支援助成金は、いくらもらえますか
1制度導入につき20万円、上限80万円です。ただし離職率15%以下という要件があり、定着しなければ支給されません。
5名採用時の人材紹介料が150万円を超えることを考えれば、助成金で採用コストを賄うという考え方は成立しません。
キャリアアップ助成金は80万円もらえると聞きました
2024年度までの情報です。2025年度から、通常の正社員化は40万円に半減しています。80万円は重点支援対象者に該当する場合のみで、第1期40万円・第2期40万円の2回に分けて支給されます。
最新の金額はどこで確認できますか
厚生労働省またはハローワークの公表資料でご確認ください。本記事の内容も、確認の起点としてお使いいただくにとどめ、申請前には必ず一次情報をご確認ください。
まとめ
- 「外国人を採用するだけ」で出る助成金は存在しない
- 人材確保等支援助成金は1制度導入につき20万円・上限80万円。離職率15%以下が要件
- キャリアアップ助成金は2025年度から通常40万円に半減。80万円は重点支援対象者のみ
- 2026年4月8日から情報公表加算(20万円)が新設された
- 多くの制度で、取り組み前の計画届出が必須。最も多い不支給理由
- 支給は採用から1年以上先。採用コストの補填ではなく、定着投資への還付
助成金は、採用を安くする道具ではありません。定着させる仕組みを整えた企業に、後から還ってくるものです。
多言語マニュアルの整備、相談体制の構築、雇用労務責任者の選任。これらはいずれも、助成金の有無にかかわらず、外国人を受け入れるなら必要な投資です。その投資に対して国が一部を補填する。順序を取り違えないでください。
採用計画と助成金の組み合わせを、
一緒に整理します
「どの制度が自社に使えるのか」「採用と定着をどう設計するのか」
まずは現在の採用状況をお聞かせください。
留学生アルバイトは Wajob、専門職正社員は Wajob Pro が対応します。
ご相談は無料です。助成金の申請代行は行っておりません
費用と制度を、さらに詳しく
業種別の費用ガイド
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」/同「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」/同「キャリアアップ助成金 支給要領(令和8年4月8日)」/同「人材開発支援助成金」
免責:本記事は外国人採用に関連する助成金の一般的な概要を企業担当者向けに整理したものです。コース・支給額・加算・要件は年度ごとに変更されます。本記事は2026年7月時点の公表情報に基づきます。具体的な支給可否・金額・手続きは、厚生労働省およびハローワークの最新情報を必ずご確認いただくとともに、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。当社は助成金の申請代行を行っておりません。
当社について:株式会社HRエージェンシー/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-317049。登録支援機関の登録は受けておりません。
最終更新:2026年7月
監修
HR AGENCY(外国人採用支援サービス)
外国人アルバイト紹介・外国人正社員紹介・外国人採用コンサルティングを提供。首都圏を中心に、企業向けの外国人採用支援を行っています。


