高度専門職での転職は、キャリアの判断であると同時に、在留資格の判断でもあります。手続きの流れは行政書士が詳しく解説していますが、「いつ動くか」「どの求人を選ぶか」はキャリアの問題です。この記事では、高度専門職で転職を考えるときに、制度とキャリアの両面から何を確認しておくべきかを整理します。
この記事の要点
- 高度専門職1号は転職のたびに在留資格変更許可申請が必要
- 許可が下りるまで転職先で働けないため、入社日の設計が要る
- 転職先の職務内容・年収がポイントに影響し得る
- 年収だけでなく、職務内容が専門分野として説明できるかが重要
- 永住を視野に入れるなら、転職の時期が計算に関わる
- 70点に届かない場合は技人国という選択肢もある
高度専門職でも転職はできる
高度専門職の在留資格を持っていても、転職は可能です。ただし、高度専門職1号は所属機関が法務大臣によって指定されるため、転職して所属機関が変わる場合は在留資格変更許可申請が必要になります。出入国在留管理庁も、活動内容を変更する場合(所属機関の変更を含む)について変更許可申請が必要としています。
技人国であれば転職時は届出だけで済みますが、高度専門職1号は違います。同じ「1号ロ」から「1号ロ」への移行、つまり職務内容がほとんど変わらない転職であっても、勤務先が変われば申請の対象です。
許可が下りるまで、新しい会社では働けません
在留資格変更許可申請は、許可を受けてはじめて新しい活動が認められます。申請中の段階で転職先での就労を開始することはできません。審査には期間を要するため、退職日と入社日の設計は、転職活動の早い段階から企業と共有しておく必要があります。
なお、高度専門職2号には所属機関の指定がありません。2号については、所属機関に変更があった場合の届出が案内されており、1号と比べると転職時の手続き負担は大きく軽減されます。
転職前に確認したい4つ
転職活動を始める前に、制度の側から確認しておきたい点が4つあります。
1. 在留資格の手続き
1号なら在留資格変更許可申請が必要です。申請には転職先に関する資料(雇用契約書、会社の概要を示す資料など)が要るため、転職先の協力が前提になります。企業側がこの手続きを理解しているかどうかは、選考の段階で確認しておくと安心です。
2. ポイントへの影響
ポイントは申請時点の学歴・職歴・年収・年齢・所属機関などをもとに計算されます。転職でこれらが変われば、計算結果も変わり得ます。特に年収は配点項目であり、1号ロ・ハでは年収300万円以上という最低基準もあります。また、特別加算には所属する機関の性質に関わる項目があるため、勤務先が変われば該当性も変わり得ます。
3. 年収
年収は、ポイントの配点項目であると同時に、キャリアの判断材料でもあります。ただし、ポイントは年収だけで決まるものではありません。学歴、職歴、年齢、日本語能力、日本の大学の卒業といった項目の合計で判断されます。転職先の提示年収だけを見て「ポイントが足りるか」を判断することはできません。
4. 業務内容
ここが最も重要です。高度専門職1号ロは「自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務」に従事する活動です。転職先の職務内容が、この活動に該当するかが問われます。
「この転職なら大丈夫」と自己判断しないこと
ポイントの計算結果や在留資格の該当性は、申請内容をもとに出入国在留管理庁が個別に審査して判断するものです。この記事の内容は一般的な整理であり、実際の許可・不許可を保証するものではありません。判断に迷う場合は、入管の窓口や、入管業務を扱う専門家に確認することをおすすめします。
転職先を見るときの考え方
ここからは、制度ではなくキャリアの話です。高度専門職を持つ方が転職先を選ぶとき、日本人の転職とは少し違う観点が入ります。
年収だけで判断しない
年収はポイントの配点項目なので、転職で年収が上がればポイントも積みやすくなります。ただし、ポイントは合計で判断されるため、年収が上がっても他の項目が変われば結果は変わり得ます。逆に、年収が横ばいでも職務内容が専門性を高める方向なら、中長期では職歴の加点につながります。
年収は判断材料のひとつであって、それだけで転職の可否を決めるものではありません。
職務内容が「専門分野」として説明できるか
高度専門職は、職務内容と自分の学歴・実務経験の関連性が問われる在留資格です。したがって、その求人の職務内容を、自分の専門分野の延長として説明できるかが実務上の分かれ目になります。
- 職務記述書が具体的か — 何をする仕事なのかが明確に書かれているか
- 自分の学歴・経験との接続 — これまでの専攻・実務と、その職務がどう繋がるかを説明できるか
- 専門性が中心にあるか — 通訳・翻訳・語学指導などの国際業務は、原則として1号ロの対象外とされている。語学力を活かす仕事でも、専門性が中心にあるかどうかで扱いが変わり得る
企業が在留資格の手続きを理解しているか
高度専門職の転職では、企業側の協力が要ります。変更申請には転職先に関する資料が必要で、許可が下りるまで入社できません。外国籍人材の採用経験がある企業かどうかは、実務上の違いになります。
選考の段階で、入社希望日と手続きのスケジュールを共有しておくと、双方の認識がずれません。
中長期のキャリアと制度の整合
転職は一度きりではありません。高度専門職1号は転職のたびに変更申請が必要になるため、今後の転職の頻度をどう見込むかで、制度の使い方が変わります。
| 見通し | 考え方 |
|---|---|
| 専門職として長く続ける | 1号で実績を積み、2号への移行を視野に入れる。2号なら所属機関の指定がなくなる |
| 転職を重ねる可能性がある | 1号では都度の変更申請が発生する。2号への移行、または永住を検討する余地がある |
| 専門分野を離れる可能性がある | 高度専門職は専門性が前提。分野を大きく変えるなら、技人国や永住など別の選択肢を検討する |
| 永住を視野に入れている | 70点以上で3年、80点以上で1年という在留歴の要件がある。転職の時期がこの計算に関わる |
永住を視野に入れているなら、転職の時期を考える
永住許可の要件のうち、高度外国人材に関する緩和は、70点以上と認められる状態で3年、80点以上と認められる状態で1年の在留歴を基準としています。この状態をどう積み上げるかが、転職の時期と関わります。
永住許可は在留歴だけでは決まりません
永住許可の審査では、在留歴のほかに、素行が善良であること、独立して生計を営むに足りる資産または技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることなどが要件とされています。納税、公的年金・公的医療保険の保険料の納付状況も確認されます。転職の時期だけで判断できるものではありません。
70点に届かない場合は、技人国という選択肢もある
転職先の条件でポイントが70点に届かない場合でも、就労の道が閉ざされるわけではありません。職務内容が該当すれば、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格への変更を検討することになります。
| 項目 | 比較 |
|---|---|
| 在留期間 | 高度専門職1号は5年。技人国は5年・3年・1年・3か月のいずれか |
| 転職時 | 高度専門職1号は変更申請が必要。技人国は原則として届出のみ |
| 永住 | 高度専門職は要件が緩和される。技人国は原則10年 |
| 配偶者の就労 | 高度専門職は一定の要件のもと、学歴・職歴の要件を満たさなくても就労できる |
| ポイント | 高度専門職は更新時に70点が確認される。技人国にポイントの概念はない |
高度専門職が常に有利というわけではありません。転職の頻度が高い働き方を想定しているなら、都度の変更申請が負担になります。優遇措置と手続きの負担を比べて、自分のキャリアに合う方を選ぶという考え方もあります。
外国籍の方の転職には、職務内容と在留資格の関係を確認する必要があります。
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高度専門職を活かしやすい業界
高度専門職は、職務内容が専門分野として明確な領域で活用されています。転職先を考えるとき、どの業界が制度と結びつきやすいかを知っておくと、選択肢を広げやすくなります。
| 業界 | なぜ結びつきやすいか |
|---|---|
| 外資系IT・クラウド | 日本法人の規模が大きく、エンジニア・ソリューション職・コンサル職などの専門職を継続的に採用している。業務で英語を使う場面が多く、専門性が職務内容として明確 |
| ERP・ITコンサルティング | SAPなどの製品知識が専門性としてそのまま評価される。海外拠点とのロールアウトや協働が発生する案件がある |
| ライフサイエンス・医療機器 | 外資系企業の比率が高く、研究・開発・薬事などの職種は専攻分野との関連性を示しやすい。修士・博士の学位がポイントの評価にも結びつく |
| 製造・半導体 | 技術職・エンジニアの専門性が職務内容として明確で、実務経験が評価されやすい |
| 外資系金融 | 高い専門性が求められる分野。海外投資家との折衝、海外拠点との連携などで語学力と専門知識を併せて生かせる |
| コンサルティング | 業務知識と分析力が専門性として評価される。日本語要件はファーム・ポジションによって異なる |
共通しているのは、職務内容が専門分野として説明できることです。業界を選ぶというより、その職務が自分の専門性の延長にあるかどうかが判断の軸になります。
転職活動の進め方
高度専門職での転職は、通常の転職活動に在留資格の手続きが加わります。順序を整理しておくと、動きやすくなります。
① キャリアを整理する
どの専門分野で、どの方向に進みたいかを整理します。高度専門職は職務内容と専門性の関連性が前提なので、自分の専門性を言葉にできることが出発点になります。学歴・実務経験と、これから就きたい職務がどう繋がるかを整理しておくと、選考でも申請でも説明しやすくなります。
② 求人を見る
職務内容と年収を確認します。職務記述書が具体的であること、その内容が自分の専門性の延長にあることを見ます。外国籍人材の採用経験がある企業かどうかも、実務上の判断材料になります。
③ 選考の段階で手続きを共有する
高度専門職の転職では、在留資格変更許可申請が必要になり、許可が下りるまで入社できません。この点を選考の早い段階で企業と共有しておくと、後の入社日調整がスムーズです。企業側にとっても、必要な資料の準備がしやすくなります。
④ オファーを受ける前に確認する
- 職務内容 — 高度専門職の活動に該当するか。職務記述書の内容を確認する
- 年収の提示額 — ポイントの配点項目であり、1号ロ・ハでは300万円以上という最低基準もある
- 企業の協力 — 変更申請に必要な資料を用意してもらえるか
- 入社希望日 — 許可が下りてからになることを共有する
- 次の更新時期 — 転職後、次の在留期間更新がいつ来るか
⑤ 在留資格変更許可申請
転職先が決まったら、在留資格変更許可申請を行います。手続きの詳細や必要書類は、出入国在留管理庁の公表情報を確認するか、入管業務を扱う専門家にご相談ください。
⑥ 許可を受けてから入社
許可が下りてはじめて、新しい勤務先での就労が認められます。退職日と入社日の間に空白が生じる場合は、退職から14日以内の届出、および本来の活動を行わない期間の扱いにも留意が必要です。
よくある質問
高度専門職のまま転職した方がいいですか。
一概には言えません。高度専門職には在留期間5年、永住許可要件の緩和、配偶者の就労といった優遇措置がある一方、転職のたびに在留資格変更許可申請が必要になります。転職の頻度をどう見込むか、永住を視野に入れるか、転職先での職務内容や年収がどうなるかによって、判断は変わります。
転職活動はいつから始めればいいですか。
在留資格変更許可申請の審査には期間を要し、許可が下りるまで転職先では働けません。そのため、通常の転職活動よりも余裕をもったスケジュールが必要になります。次の在留期間更新が近い場合は、更新と変更のどちらを先にするかも含めて、早めに確認しておくことをおすすめします。
転職で年収が下がると、高度専門職ではなくなりますか。
年収はポイントの配点項目のひとつであり、他の項目との合計で判断されます。年収が下がっても、他の項目で70点に達していれば要件を満たし得ます。ただし、1号ロ・ハでは年収300万円以上という最低基準があります。実際の該当性は、申請内容をもとに出入国在留管理庁が個別に審査します。
外資系企業へ転職するときも、高度専門職は使えますか。
在留資格は勤務先が日系か外資系かで決まるものではなく、従事する職務内容と、学歴・実務経験との関連性などをもとに判断されます。外資系企業の日本法人でも、専門職の受入れにあたって高度専門職が用いられています。
転職先が決まる前に退職しても大丈夫ですか。
退職した日から14日以内に「契約機関に関する届出」を提出する必要があります。また、本来の活動を継続して3か月(高度専門職2号は6か月)以上行っていない場合は、在留資格の取消事由に該当し得ます。ただし、出入国在留管理庁は「正当な理由」があるときは取消しの対象とならないとしており、転職活動を行っている場合などが個別に判断されます。
2号なら転職の手続きは楽になりますか。
高度専門職2号には所属機関の指定がありません。入管では2号について、所属機関に変更があった場合の届出が案内されています。そのため1号と比べると、転職時の手続き負担は大きく軽減されます。ただし届出は必要であり、高度専門職としての活動が前提である点は変わりません。
高度専門職を活かせる分野を見る
- 外資系IT・クラウド
- ERP・ITコンサルティング
- ライフサイエンス・医療機器
- 製造・半導体
- 外資系金融
転職の判断は、制度だけでも、求人だけでも決まりません。自分の専門性がどこで生き、その先にどんなキャリアがあるかを整理することが出発点になります。
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出典:出入国在留管理庁「在留資格『高度専門職』(高度人材ポイント制)」「所属(契約)機関に関する届出」「所属機関等に関する届出Q&A」「出入国審査・在留審査Q&A」ほか、同庁の公表情報にもとづきます。
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。在留資格の該当性、ポイントの計算結果、必要となる手続き、許可・不許可の判断は、申請内容をもとに出入国在留管理庁が個別に審査するものであり、本記事の記載が許可を保証するものではありません。制度・要件は改定される場合があります。最新かつ正確な情報は、出入国在留管理庁の公表情報をご確認ください。個別の申請手続きについては、入管業務を扱う専門家にご相談ください。
当社について:株式会社HRエージェンシー/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-317049。登録支援機関の登録は受けておりません。
最終更新:2026年7月
監修
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