「求人を出しても応募が来ない」「採用しても、数カ月で辞めてしまう」「シフトが埋まらず、店長や社員が穴を埋め続けている」。飲食店を経営していると、こうした人手不足に悩む場面は少なくありません。
- 人手不足は「採れない」「辞める」「人手がかかりすぎる」の3つに分けて考える
- 求人媒体を増やす前に、求人票の内容と「誰を採ろうとしているか」を見直す
- 採用だけでなく、必要な仕事そのものを減らす視点も持つ
- それでも足りなければ、外国人留学生まで採用対象を広げる
実際、帝国データバンクの2026年7月調査では、飲食店で非正社員が不足していると回答した企業は57.7%。前年より改善しているものの、調査対象の業種のなかでは最も高い水準でした。
ただし、飲食店の人手不足をすべて「応募が来ないから」と考えると、対策を間違えます。店舗の状況を整理すると、人手不足は大きく「採れない」「辞める」「人手がかかりすぎる」の3つに分けられます。まずは自店がどこで詰まっているのかを確認することが、人手不足対策の出発点です。
飲食店の人手不足は「3つ」に分けると対策が見える
同じ「人が足りない」という状態でも、原因によって打つべき対策は違います。
求人を出しても応募が来ないのであれば、採用条件や募集方法を見直す必要があります。採用はできるのにすぐ辞めてしまうのであれば、求人広告を増やしても根本的な解決にはなりません。教育やシフト、現場の受け入れ方を見直す必要があります。そして、そもそも店舗運営に多くの人手を必要としているのであれば、採用だけでなく業務そのものを減らすことも考える必要があります。
人手不足になったらすぐに「求人を増やす」と考えるのではなく、まず、①採れない、②辞める、③人手がかかりすぎる、のどこに問題があるのかを切り分けてみましょう。
①「採れない」飲食店が見直したいこと
求人票が求職者目線になっているか
最初に確認したいのは、求人そのものです。時給だけではなく、週何日から働けるのか、1日何時間から働けるのか、シフトはどの程度柔軟なのか、未経験でも働けるのか、どのような仕事を担当するのかまで、応募する側が働く姿を想像できる内容になっているかを確認します。
特に飲食店では、「ホールスタッフ募集」「キッチンスタッフ募集」だけでは仕事内容が伝わりにくいことがあります。仕事内容や勤務条件を具体的にするだけでも、応募前の不安を減らせます。
求人媒体を増やすだけになっていないか
応募が来ないと、別の求人媒体にも掲載したくなります。もちろん募集経路を増やすこと自体は一つの方法です。ただ、同じ条件・同じ採用対象のまま掲載先だけを増やしても、結果が大きく変わらないことがあります。
見るべきなのは、「どこに求人を出すか」だけではなく、「誰を採ろうとしているか」です。学生、主婦・主夫、フリーター、シニア、外国人留学生など、飲食店で働ける人材は一つの層だけではありません。特定の層だけを採用対象にしている店舗では、対象を広げることで応募母数そのものを増やせる可能性があります。
②「採用できるのに辞める」飲食店が見直したいこと
人を採用できているのに人手不足が続く場合は、採用数より定着に問題があるかもしれません。新しく1人採用しても、既存スタッフが1人辞めれば人数は増えません。それでも採用だけを強化すると、「採用する→教育する→辞める→また採用する」という状態を繰り返すことになります。
初日から最初の1週間を見直す
新人が定着するかどうかを考えるうえで、入社直後の受け入れ方は重要です。忙しい店舗ほど、「今日から入った人を、とりあえず現場に入れる」という状態になりがちです。
しかし、新人からすると、誰に聞けばいいのか分からない、教える人によって言うことが違う、忙しくて質問できない、といった環境は大きな負担になります。最初に教える仕事を決める、教育担当を決める、簡単なマニュアルを用意する。大掛かりな制度を作らなくても、受け入れ方を決めておくだけで新人側の戸惑いは減らせます。
店長やベテランだけに負担が集中していないか
人手不足の店舗では、仕事ができる人ほど負担が増える傾向があります。欠員が出れば店長が入る。新人が入ればベテランが教える。忙しくなれば同じ人が残業する。この状態が続けば、今度は中心メンバーが疲弊します。
「新人を採用すること」だけではなく、既存スタッフが無理なく働き続けられる状態になっているかも、人手不足対策では確認しておきたいポイントです。
③「そもそも人手がかかりすぎる」飲食店が見直したいこと
人手不足対策というと採用ばかりに目が向きますが、もう一つ方法があります。必要な仕事そのものを減らすことです。
たとえば、モバイルオーダー、セルフレジ、キャッシュレス決済、予約管理システム、勤怠・シフト管理システム、配膳ロボット、在庫管理システムなど、これまで人が行っていた作業の一部を省力化できる仕組みは増えています。
もちろん、すべての店舗で大規模なシステム投資が必要なわけではありません。大切なのは、「あと1人採用するにはどうするか」だけでなく、「あと1人いなくても回せる仕事はないか」という視点を持つことです。
それでも採れないなら「誰を採るか」を広げる
求人条件を見直す。定着しやすい環境をつくる。省力化できる仕事を減らす。そこまでやっても必要な人数を確保できないのであれば、次に考えたいのが採用対象を広げることです。
飲食店のアルバイト採用では、日本人の学生やフリーターだけでなく、外国人留学生も候補になります。重要なのは、「外国人を採れば人手不足が解決する」と考えることではありません。自店が必要としている曜日・時間帯・仕事内容と、求職者側の希望が合う人を探す。その対象を外国人留学生まで広げる、という考え方です。
これまで日本人だけを対象に募集していた店舗であれば、採用対象を広げることで、これまで接点のなかった求職者にも求人を届けられるようになります。
飲食店で外国人留学生を採用するという選択肢
外国人留学生をアルバイトとして採用する場合、日本人アルバイトとは異なる確認事項があります。特に重要なのが、在留資格と資格外活動許可、就労時間の確認です。
在留資格「留学」は、それ自体で自由にアルバイトができる在留資格ではありません。
通常期は1週について28時間以内、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間中は1日について8時間以内です。複数のアルバイトをしている場合も、それぞれの勤務先で28時間働けるという意味ではなく、その合計が1週について28時間以内である必要があります。
そのため採用時には、在留カードなどで在留資格と資格外活動許可の有無を確認し、他のアルバイト状況も含めて勤務時間を管理できる状態にしておくことが重要です。この確認と管理は、雇用する企業が行います。
外国人だから採用するのではなく、「店舗に合う人」を採用する
外国人採用を考えるときに、国籍だけで判断する必要はありません。見るべきなのは、日本人を採用するときと同じです。
接客に必要な日本語でコミュニケーションが取れるか。希望する勤務日数や時間帯が店舗と合っているか。ホールとキッチンのどちらが向いているか。どのくらいの期間働きたいのか。飲食店での経験はあるのか。こうした条件を確認したうえで、店舗に合う人を採用します。
特にホールでは、お客さまとの会話や注文対応が発生します。一方、キッチンでもスタッフ同士の指示を理解する日本語力は必要です。「外国人だから人手不足を埋めてくれる」と考えるのではなく、採用候補者の母集団を広げ、そのなかから店舗に合う人を選ぶという考え方が重要です。
正社員として外国人を採用する場合は、在留資格が変わる
アルバイトではなく、外国人を正社員として採用したい場合は別の整理が必要です。外国人が日本で働ける業務は在留資格によって異なるため、採用予定の仕事内容が、その人の在留資格で認められている活動に該当するかを確認する必要があります。
そのため、「外国人を正社員として採用できるか」ではなく、「この仕事内容を、この在留資格の人が担当できるか」で考える必要があります。アルバイト採用と正社員採用では確認すべき制度が違うので、分けて考えた方が分かりやすいでしょう。
飲食店の人手不足対策は「どこで詰まっているか」から考える
飲食店の人手不足には、すべての店舗に共通する一つの解決策があるわけではありません。
求人を出しても応募が来ないのであれば、求人条件や採用対象を見直す。採用できても辞めてしまうのであれば、教育やシフト、職場環境を見直す。店舗運営そのものに人手がかかりすぎているのであれば、省力化できる業務を探す。そして、それでも必要な人数を確保できないのであれば、外国人留学生を含めて採用対象を広げる。この順番で考えると、必要な対策が見えやすくなります。
人手不足だからといって、最初から外国人採用ありきで考える必要はありません。ただ、「採用したいのに、これまでの採用対象だけでは十分な応募が集まらない」のであれば、外国人・留学生まで対象を広げることは有力な選択肢の一つです。
飲食店で使える採用方法を一度まとめて比較したい方は、飲食店の採用方法を整理する|人手不足を解決する採用手段の総合ガイドで、自店に合う方法から確認してみてください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度や運用は改正される場合があります。最新の要件は、出入国在留管理庁・厚生労働省などの公的機関でご確認ください。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」/出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
2026年10月時点
監修
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