SAP人材を採用するには|モジュール別の要件・在留資格・求人票の作り方

基幹システムの刷新やSAP S/4HANAへの移行が進む一方で、SAP人材は市場で最も確保が難しい職種のひとつです。求人を出しても、必要なモジュール経験を持つ候補者からの応募が集まらないという声は少なくありません。とくにグローバル導入案件では、語学力と業務知識を併せ持つ人材が求められ、国内の候補者だけでは要件を満たしにくくなります。海外でのSAP導入経験を持つ人材まで対象を広げれば、採用の可能性は広がります。

この記事の結論

  • SAP人材の採用は、どのモジュールを任せるかを決めることが出発点です。FI/CO・SD・MM・PP・HCM・Basisで、求める知識も候補者層もまったく変わります。
  • SAPは業務知識とシステム知識の両方を求める職種です。会計や購買といった業務側の理解があるかを、モジュールごとに確認します。
  • 在留資格は職務内容・学歴・職歴・雇用条件を踏まえて個別に判断されるため、求人票の業務内容と実際の業務を一致させることが重要です。

この記事は「専門職の外国人採用」クラスターの職種別記事です

求職者向けにSAPコンサルタントの仕事内容・年収・キャリアパスを解説した記事は別にあります。

SAP人材の採用が難しくなっている理由

SAP ERPの保守期限を見据えたS/4HANAへの移行、基幹システムの刷新、海外拠点を含めたグローバル展開——こうしたプロジェクトが同時期に集中し、SAP人材の需要が供給を上回る状況が続いています。

SAPは、システムの知識だけでは務まりません。会計、販売、購買、生産といった業務側の理解があってはじめて、要件を設計に落とし込めます。この両方を持つ人材は国内でも限られ、コンサルティングファームやSIerに集中しているのが実情です。

そのため、日本人だけでなく、海外でのSAP導入経験を持つ人材まで採用対象を広げる企業が増えています。グローバルテンプレートの展開や海外拠点へのロールアウトでは、英語での要件定義ができる人材が必要になるため、外国籍人材の採用が現実的な選択肢になります。

SAP人材に任せられる仕事内容

SAP人材の業務は、プロジェクトのフェーズによって内容が変わります。どの段階を担ってもらうかで、求める経験も変わります。

  • 要件定義:業務部門へのヒアリング、現行業務の整理、あるべき姿の設計
  • Fit&Gap分析:SAP標準機能と業務要件の差分を洗い出し、対応方針を決める
  • 設計・コンフィグレーション:モジュールの設定、アドオン開発の要件整理
  • テスト・移行:単体・結合テストの実施、データ移行の設計
  • 導入後の保守・改善:問い合わせ対応、追加要件への対応、バージョンアップ
  • 海外拠点へのロールアウト:グローバルテンプレートの現地展開、現地要件の調整

要件定義から任せるなら業務知識と日本語での折衝力が、保守・改善が中心ならモジュールの設定経験が要点になります。

モジュール別に見る採用要件

SAPはモジュール単位で専門性が分かれます。どのモジュールを任せるかで、求める知識も候補者層も変わります。採用要件を決める最初のステップです。

モジュール 領域 求める知識の軸
FI・CO 財務会計・管理会計 会計知識。簿記や経理実務の経験が生きる
SD 販売管理 受注から出荷・請求までの業務プロセス理解
MM 購買・在庫管理 調達・在庫管理の業務知識
PP 生産計画 製造業の生産管理プロセスの理解
HCM・SuccessFactors 人事・人材管理 人事制度・給与計算の知識
Basis SAP基盤・運用 インフラ・データベース・技術基盤の知識

複数モジュールの経験を持つ人材は希少です。まず必須のモジュールを1つに絞り、他は歓迎要件とする方が、候補者が集まりやすくなります。

※SAP以外のERP製品(Oracle、Dynamics 365、国産ERPなど)も含めて検討する場合は、ERP人材を採用するにはで製品別の考え方を整理しています。

外国籍のSAP人材が活躍しやすい業務

同じSAP案件でも、外国籍人材の強みが特に生きる業務があります。自社にこうした案件があるかどうかが、採用効果を判断する目安になります。

  • 海外拠点へのロールアウト:グローバルテンプレートを現地に展開し、現地要件を調整する
  • グローバルテンプレートの設計:複数国で使える標準プロセスを設計する
  • 海外ベンダー・オフショアとの連携:開発チームが海外にある場合の橋渡し
  • 英語での要件定義:海外拠点の業務部門から直接ヒアリングする
  • 多言語・多通貨対応:各国の会計基準・税制に対応した設定
  • 海外拠点の保守サポート:時差のある拠点からの問い合わせ対応

逆に、国内単体の導入で英語を使う場面がない案件では、外国籍であることの強みは出にくくなります。「海外拠点がある」「グローバル展開を予定している」「オフショア開発を使っている」のいずれかに当てはまる企業では、採用効果が出やすい傾向があります。

採用候補になる外国籍人材

候補者の背景はいくつかに分かれます。

候補者のタイプ 特徴 向いている業務
国内在住の中途人材 日本でのSAP導入経験があり、日本語での要件定義に慣れている。SIerやコンサルティングファーム出身が多い 国内案件の要件定義、業務部門との折衝
海外でのSAP経験者 本国や第三国での導入・保守経験。英語力が高く、グローバルテンプレートの知見を持つ場合も 海外ロールアウト、英語での要件定義
日本の大学・大学院を出た新卒 情報系の学位を持ち、日本語も一定水準。SAP経験はこれから 保守・運用からの育成
ITエンジニアからの転向者 開発経験があり、ABAP等の習得が早い。業務知識はこれから アドオン開発、Basis領域

即戦力で国内案件を任せたいなら国内在住の中途人材、海外展開が主目的なら海外経験者、というように、任せる案件から逆算して候補者像を決めます。

採用時に求める経験・スキル

SAP人材は、システムと業務の両面が問われます。

  • モジュールの実務経験:担当したモジュール、設定経験の有無、プロジェクトのフェーズ
  • 業務知識:担当モジュールに対応する業務(会計・購買・生産など)の理解
  • プロジェクト経験:導入規模、期間、担当した役割(メンバーかリーダーか)
  • 技術スキル:ABAP、SAP Fiori、S/4HANAの経験(担当領域による)
  • コミュニケーション:業務部門から要件を引き出し、システム要件に翻訳する力
  • 資格:SAP認定コンサルタント資格は知識の確認材料の一つですが、実際には担当したモジュール・プロジェクトフェーズ・業務知識・設定経験などを総合的に確認する企業が多く見られます

すべてを満たす候補者は多くありません。必須要件と歓迎要件を分けて設計することで、母集団を過度に狭めずに済みます。

日本語力・英語力の決め方

SAP人材の日本語力は、担当フェーズによって必要水準が大きく変わります。「N1必須」と一律に書くと、実務では十分に働ける候補者を取りこぼします。

担当フェーズ 求められる力 目安
要件定義・業務部門との折衝 会話力・質問力。業務の前提を引き出せるか ビジネス会話ができる水準
設計書・仕様書の作成 読み書き。日本語で仕様を記述できるか 技術文書を書ける水準
設定・開発が中心 読解中心。仕様書を正確に読めるか 読解ができれば対応可能な場合も
海外拠点へのロールアウト 英語での要件定義・折衝 英語での会議・ドキュメント作成

海外ロールアウトが主業務なら英語力を優先し、日本語は読解中心で足りる場合もあります。国内の要件定義が中心なら、会話力の比重が上がります。

年収・待遇の決め方

年収は国籍ではなく、職務内容・経験・能力・市場水準に応じて決めます。外国籍であることを理由に水準を下げることは、在留資格の観点からも適切ではありません。

SAP人材の年収は、担当モジュール、経験年数、プロジェクトでの役割(メンバー/リーダー/PM)によって幅があります。市場水準は求職者向けの記事で整理していますので、SAPコンサルタントへ転職するにはの年収の項もあわせてご確認ください。

待遇設計で確認しておきたい点

  • 同じ業務に従事する日本人従業員と同等以上の報酬であること
  • SAP人材は市場価値が高く、他社との競合が発生しやすいことを想定すること
  • 資格取得支援、研修機会など、スキル向上の環境を提示すること
  • 住宅の確保、来日時の引越し、在留資格手続きの支援有無を整理しておくこと

在留資格と職務内容の確認

外国籍人材をSAP人材として採用する場合、就労可能な在留資格を持っているか、または取得・変更できるかを確認します。専門性のあるIT・コンサル業務は「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の対象となる場合が多いものの、該当するかどうかは実際の職務内容、本人の学歴・職歴、雇用条件などを踏まえて個別に判断されます。

採用前に確認したい4点

  • 在留資格該当性:任せる業務が、専門性を伴うIT・コンサル業務として在留資格の範囲に収まるか
  • 専攻・経験との関連性:情報系の学位、SAP実務経験、または対応する業務経験があるか
  • 報酬の同等性:日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上の報酬か
  • 業務の専門性:単純な操作・入力のみの業務は、専門職としての在留資格の対象にならないとされています

在留資格の全体像は専門職の外国人採用ガイド、中途採用の注意点は外国人の中途採用で解説しています。

書類選考・面接で確認するポイント

SAP人材の選考では、経歴書の「SAP経験3年」だけでは実力が分かりません。担当した範囲を分解して確認します。

  • 担当モジュール:どのモジュールを、どの深さで担当したか
  • プロジェクトフェーズ:要件定義から入ったか、テスト工程からか
  • 設定経験の有無:コンフィグを自分で行ったか、指示に従ったか
  • プロジェクト規模:拠点数、ユーザー数、期間、チーム人数
  • 業務知識:担当モジュールに対応する業務を説明できるか
  • トラブル対応:本番稼働後の問題にどう対処したか
  • 日本で働く理由・キャリア志向:長期的な就業意向と、その背景

面接で使える質問例は外国人採用の面接質問30選、中途の評価軸は外国人中途採用の評価ポイントを参照してください。

SAP人材の求人票の作り方

SAPの求人票は、モジュールとフェーズを明記しないと候補者が判断できません。

  • モジュールを明記する:「SAP経験者」ではなく「FI/CO経験者」と具体的に
  • 担当フェーズを示す:要件定義から参画か、保守・改善か
  • プロジェクトの概要を書く:S/4HANA移行、新規導入、海外ロールアウトなど
  • 必須と歓迎を分ける:FI/CO経験は必須、S/4HANA経験は歓迎、というように区別する
  • 日本語レベルを業務で表現する:「N1以上」ではなく「業務部門と日本語で要件を確認できる方」
  • 英語の使用場面を書く:海外拠点とのやり取りあり、など具体的に
  • 体制を明記する:社内SEか、コンサルとしての参画か、チーム構成はどうか

SAP人材を採用する方法

方法 特徴 向いているケース
人材紹介 要件に合う候補者を絞って紹介。在留資格の確認も相談できる モジュール経験者を確実に採りたい
求人媒体 費用を抑えられるが、選別と在留資格確認は自社で行う 母集団を広く集めたい
ダイレクトリクルーティング 登録者に直接アプローチ。SAP人材は転職市場に出にくいため有効な場合も 採用担当のリソースがある
新卒採用(留学生) 情報系の留学生を採用し、SAP研修を経て育成 長期的に内製化したい

費用の相場や採用にかかる期間は、外国人採用の費用はいくら?で整理しています。

入社後の受入れ・定着

  • 自社の業務プロセスの説明:SAP経験があっても、自社固有の業務ルールは別途共有が必要です
  • 既存システムの全体像:周辺システムとの連携、過去の改修経緯を伝える
  • 業務部門との関係づくり:要件定義の相手となる部門に事前に紹介する
  • やさしい日本語での運用:仕様書や依頼文で、曖昧な表現を減らす
  • スキル向上の機会:SAP人材は学習機会を重視する傾向があります
  • 定期面談:入社1か月・3か月時点で、担当範囲の認識ズレを確認する
  • 在留期限の管理:更新時期を人事側でも把握しておく

入社後の受け入れ設計は、外国人社員の定着率を上げるオンボーディングもあわせてご覧ください。

Wajob Proで紹介できる人材

Wajob Proでは、技術・人文知識・国際業務を中心とした在留資格で働く、専門職の外国人材をご紹介しています。SAP・IT領域では、次のような人材が対象です。

  • FI/CO経験5年前後の中途人材:国内SIerで会計モジュールの要件定義から導入まで担当し、日本語での業務部門折衝に対応できる人材
  • SD・MMの導入経験者:販売管理・購買管理の業務プロセスを理解し、設定まで自ら行える人材
  • S/4HANA移行の経験者:ECCからの移行プロジェクトに参画し、移行設計やデータ移行を担当した人材
  • 海外ロールアウト経験者:グローバルテンプレートの現地展開を担い、英語で要件定義ができる人材
  • ABAP開発経験者:アドオン開発の実装経験があり、技術面からプロジェクトを支えられる人材
  • 日本の大学で情報系を学んだ留学生:SAP研修を経て育成する前提の新卒層

Wajob Proは、日本の大学・専門学校とのネットワークを通じて、年間1万名規模の外国人材と接点を持っています。情報系を学んだ留学生から、国内で実務経験を積んだ専門職まで、職種と業務内容に応じてご紹介できます。

SAP人材は、募集要項の書き方ひとつで採用できる人材が大きく変わります。「どのモジュールを必須にすべきか決められない」「この業務で技人国に該当するか分からない」——そうした段階からご相談いただけます。

ご相談の流れは、①任せたい案件とモジュールを伺う → ②在留資格の該当性と求める要件を整理する → ③紹介可能な人材を確認し、候補者をお探しするという進め方です。

外国籍のSAP採用が向いている企業

SAPは国内案件だけでなく、グローバルテンプレートの展開や海外拠点との連携が発生するため、外国籍人材の強みが活きやすい職種です。次のような企業では、特に採用効果が出やすくなります。

  • 海外拠点があり、グローバルでのSAP展開を予定している
  • 日本人のSAP経験者だけでは候補者が集まらない
  • オフショア開発チームとの連携がある
  • S/4HANA移行を控えており、人員を強化したい

一方、業務が定型的な操作・入力にとどまる場合や、担当モジュールが決まっていない場合は、採用してもミスマッチが起きやすくなります。まず任せる案件とモジュールを具体化することをおすすめします。

よくある質問

外国籍のSAP人材はどの在留資格で採用できますか?

専門性のあるIT・コンサル業務は「技術・人文知識・国際業務」の対象となる場合が多いですが、該当するかは実際の職務内容、学歴・職歴、雇用条件を踏まえて個別に判断されます。

SAP認定資格は必須ですか?

必須ではありません。資格は知識の目安になりますが、実務でどのフェーズを担当したか、設定を自分で行ったかといった経験の中身の方が重要です。

情報系の学位がないSAP経験者も採用できますか?

学歴と業務の関連性は確認事項の一つですが、SAPの実務経験によって関連性が認められる場合もあります。たとえば会計学位でFI/COを担当するケースなど、業務との対応関係を確認します。

日本語ができなくてもSAP人材として採用できますか?

担当フェーズによります。海外ロールアウトや英語環境での開発が中心であれば、日本語は読解中心で対応できる場合もあります。国内の業務部門と要件定義を行う場合は、会話力が必要になります。

採用までどれくらいの期間がかかりますか?

国内在住者の中途採用であれば、選考から入社まで1〜3か月程度が目安です。SAP人材は在職中の候補者が多く、退職交渉に時間がかかる場合もあります。

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任せたい案件とモジュールを伺ったうえで、対象となる人材、在留資格の考え方、採用方法を整理します。「どのモジュールを必須にすべきか」といった要件の段階からご相談いただけます。

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※在留資格の該当性は個別の事案ごとに判断されます。実際の申請・採用判断にあたっては、出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。

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監修

HR AGENCY(外国人採用支援サービス)

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