警備業の人手不足は、他業種とは水準が違います。有効求人倍率6.70倍。全職業平均の1.10倍に対し、約6倍です。
そして、この数字は「募集すれば来る」ことを意味しません。求職者1人を6社が奪い合っている状態です。求人広告の出稿を増やしても、母集団そのものが存在しない。
この記事では、警察庁と厚生労働省の一次資料に基づいて、なぜここまで深刻なのかを構造から整理します。そのうえで、採用以外の選択肢を含めて対策を検討します。
この記事の結論
- 有効求人倍率6.70倍(2025年9月)。全職業1.10倍の約6倍
- 全警備員のうち60歳以上が47%、65歳以上が34.3%、70歳以上が20.9%
- 全職業の65歳以上は13.6%。警備業は2.5倍の高齢化率
- 令和6年には28名の警備員が殉職している
- 国(警察庁)は採用増ではなく省力化(ロボット・DX)を推進している
- 現時点で、現場警備員として確実に採用対象としやすいのは就労制限のない身分系在留資格等を持つ人材
数字で見る、警備業の人手不足
感覚ではなく実数で把握します。警察庁が令和7年12月22日に公表した「省力化投資促進プラン ―警備業―」から引用します。
警察庁「省力化投資促進プラン ―警備業―」(令和7年12月22日)
警備業は、過酷な労働環境・低賃金のため、人手不足が深刻化している(2025年9月の有効求人倍率:警備業6.70倍/全職業1.10倍)。
警備員は、離職率が高く、高齢化が進んでいる(2024年における65歳以上の労働者の割合:警備業34.3%/全職業13.6%)。
警備業務は危険と隣り合わせであり、毎年、多くの警備員が不慮の事故により殉職している(令和6年には28名が殉職)。
有効求人倍率6.70倍が意味すること
求職者1人に対して、6.7件の求人がある状態です。つまり1人の応募者を、6社以上が奪い合っています。
近年は5倍を超える水準が続いており、全職業平均の5〜6倍で推移しています。景気や求人条件だけでは説明できない、構造的な人材不足です。
求人広告費を増やしても解決しない理由
6.70倍という数字は、求職者の絶対数が足りていないことを示します。掲載媒体を増やしても、求人票をどれだけ丁寧に作り込んでも、そもそも母集団が存在しません。
月20万〜40万円の広告費を投じて応募がゼロという状況は、貴社の求人票が悪いからではなく、市場構造の問題です。打ち手を変える必要があります。
超高齢化の実態
| 年齢区分 | 警備業 | 全職業 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 60歳以上 | 47% | — | — |
| 65歳以上 | 34.3% | 13.6% | 2.5倍 |
| 70歳以上 | 20.9% | — | — |
警備員の5人に1人が70歳以上です。そして約半数が60歳以上。
これは「高齢者が活躍している」という話ではありません。若手が入ってこないため、既存の警備員が加齢しているだけです。この構造が続けば、10年後に大量の引退が同時に発生します。
見過ごされている数字
警察庁の資料には、採用系の記事がまず触れない数字も並んでいます。
- 令和6年に28名の警備員が殉職している
- 女性警備員の割合は全体の7.3%にとどまる
- 警備員の9%は雇用期間4か月未満の臨時警備員
「人手不足だから若手を採ろう」と論じる前に、この現実があります。危険と隣り合わせの業務であること、女性が入りにくい環境であること、雇用が安定していない層が1割いること。これらを放置したまま母集団だけ広げても、定着しません。
なぜ人が集まらないのか
警察庁は原因を「過酷な労働環境・低賃金」と明記しています。より具体的に分解します。
① 新任教育20時間という参入障壁
警備業法第21条により、新たに警備業務に従事させる警備員には20時間以上の新任教育が義務づけられています。基本教育と業務別教育の合計です。
「未経験・無資格OK」と求人に書けても、採用後すぐに現場へ配置できるわけではありません。一般の未経験者には、原則として20時間以上の新任教育が必要です。
教育期間中の賃金や指導担当者の確保も含め、採用後の教育コストを見込む必要があります。企業にとってはコスト、求職者にとっては「すぐ働けない」というハードルになります。
② 屋外・立ち仕事・夜勤という労働条件
交通誘導は悪天候でも屋外に立ち続けます。施設警備は24時間シフトで夜勤が入ります。体力面での懸念から、応募をためらう層が一定数存在します。
③ 平均勤続年数の短さ
警備員の平均勤続年数は9.5年(賃金構造基本統計調査)。全職業平均の12.3年を下回ります。入っても定着しない構造があります。
採用を増やすだけでは、穴の空いたバケツに水を注ぐことになります
離職率が高いまま採用数だけ増やしても、教育コストが積み上がるだけです。新任教育20時間は、離職者1名ごとに丸ごと失われます。
採用と同時に、あるいは採用より先に、定着の設計に取り組む必要があります。
国は「採用」ではなく「省力化」を推進している
見落とされがちですが、重要な事実があります。
警察庁が令和7年12月に公表したのは「採用促進プラン」ではなく、「省力化投資促進プラン」です。人を増やすのではなく、人が要らない仕組みをつくる方向に舵が切られています。
推進されている技術
- 警備ロボット、バーチャル警備システム、警備ドローンを活用した施設警備業務の省力化
- 交通誘導システム等を活用した交通誘導警備業務の省力化
あわせて警察庁は、法定教育へのeラーニング導入事業者を、2025年11月末時点の約313事業者から、2029年度までに約1,000事業者へ増やす目標を掲げています。省力化支援施策に関する説明会も年4回開催されています。
背景には、労働災害の防止という目的もあります。省力化は人手不足対策であると同時に、殉職者を減らす取り組みでもあります。
「採用」と「省力化」は対立しません
すべての現場をロボットに置き換えられるわけではありません。判断を要する業務、対人対応が必要な業務は人が担い続けます。
重要なのは、限られた人員をどこに配置するかです。省力化できる現場は省力化し、人でなければならない現場に人を集中させる。この設計ができている会社と、そうでない会社の差は今後さらに開きます。
外国人採用という選択肢
省力化と並行して検討すべきなのが、母集団の拡大です。
日本で働く外国人は2,571,037人(令和7年10月末、厚生労働省)。前年比11.7%増で、過去最多を更新しています。
ただし、警備業には他業種にない制約があります
まず、最もよくある誤解から。警備業法に「外国人は警備員になれない」という規定は存在しません。警備員の欠格事由は警備業法第14条および第3条第1号〜第7号に列挙されていますが、「外国人」「外国籍」という文言は一切ありません。
制約は入管法の側にあります。
| 在留資格 | 警備業務 | 理由 |
|---|---|---|
| 永住者・定住者・日本人の配偶者等 永住者の配偶者等・特別永住者 |
可 | 就労活動に制限がない |
| 特定技能 | 不可 | 警備業は特定産業分野に含まれない |
| 技能実習 | 不可 | 移行対象職種に警備業務がない |
| 技術・人文知識・国際業務 | 不可 ※現場警備 |
専門知識・国際感覚を要する業務に該当しない(本部・管理職なら可) |
| 育成就労(2027年4月施行予定) | 不可 | 現時点で警備業は対象分野に含まれていない |
| 留学+資格外活動許可 | 要個別確認 | 一般的な資格外活動許可の要件だけでは警備業務の取扱いが明確でないため、採用前に地方出入国在留管理局へ確認 |
他業種で使われる特定技能や技能実習は、警備業では使えません。現時点で確実に採用対象としやすいのは、就労制限のない身分系在留資格等をお持ちの方ということになります。
就労制限のない在留資格等を持つ人は約165万人
「身分系しか使えない」と聞くと選択肢が狭く思えますが、実数は違います。
永住者947,125人、特別永住者266,896人、定住者226,438人、日本人の配偶者等152,898人、永住者の配偶者等56,568人。合計1,649,925人(令和7年末、出入国在留管理庁)。在留外国人412万5,395人の40.0%にあたります。
在留資格上は職種や就労時間の制限がなく、夜勤や正社員雇用も可能です。ただし、労働基準法など通常の労働関係法令は日本人と同様に適用されます。留学生の資格外活動のような週28時間の上限管理は不要で、警備業のシフト構造とは相性の良い在留資格です。
ただし、この約165万人は採用可能人数そのものではありません
年齢・居住地域・就業状況・職業希望などを含まない在留者数です。すでに就業している方、高齢の方、子ども、警備職を希望しない方、勤務地から離れた地域にお住まいの方、警備業法上の欠格事由に該当する方も含まれます。警備員として実際に採用できる人材はその一部であり、採用市場の大きさを示す参考値として捉えてください。
ただし、この母集団は年1.8%しか増えません
身分系在留資格は、外から供給される資格ではありません。長年日本に住み、要件を満たした人が積み上がっていく資格です。前年比+1.8%。特別永住者に至っては−2.6%と減少しています。
一方、日本で働く外国人全体は前年比11.7%増。全体が二桁で伸びるなかで、警備業が対象とできる在留資格の人数だけが年2%未満でしか増えません。特定技能や技能実習を使える業種は送り出し国から新規に確保できますが、警備業にはそれができない。限られた採用対象へ継続的に接点を持ち、定着まで含めた受入体制を整えることが重要です。
制度の詳細は警備員に外国人はなれる?採用できる在留資格・できない在留資格で解説しています。
いま取れる3つの打ち手
① 省力化できる現場を切り分ける
施設警備の巡回、常駐の一部、交通誘導の定点配置。機械化・システム化で代替できる業務を洗い出してください。警察庁が説明会を開催しています。
すべてを人で埋める前提を捨てることが、最初の一歩です。
② 定着の設計を、採用より先に行う
平均勤続年数9.5年、離職率の高さ。ここを放置したまま採用数だけ増やしても、新任教育20時間が繰り返し失われます。
労働条件、シフトの組み方、キャリアパス。入った人が辞めない設計を先に作ってください。
③ 母集団を、身分系在留資格まで広げる
日本人だけを対象にした求人で6.70倍の市場を戦うのか、就労制限のない在留資格等をお持ちの方まで対象を広げるのか。
この在留資格の人数は年1.8%しか増えません。限られた採用対象へ継続的に接点を持ち、定着まで含めた受入体制を整えることが重要です。単発の募集ではなく、パイプラインとして設計してください。
よくある質問
求人広告を増やせば応募は集まりますか
求人広告の追加だけで、大幅な改善を期待するのは難しい状況です。有効求人倍率6.70倍は、求職者の絶対数が足りていないことを意味します。1人の応募者を6社以上が奪い合っています。
掲載媒体を増やしても、母集団そのものが存在しません。打ち手を変える必要があります。
高齢の警備員が多いのは問題ですか
ご本人が健康で意欲的であれば、年齢自体は問題ではありません。ただし65歳以上が34.3%、70歳以上が20.9%という構成は、10年後に大量の引退が同時に発生することを意味します。
いま若手・中堅層のパイプラインを作らなければ、その時点で事業継続が困難になります。
外国人を採用すれば人手不足は解決しますか
母集団は広がりますが、解決はしません。
警備業で確実に採用対象としやすいのは就労制限のない身分系在留資格等をお持ちの方であり、その人数は年1.8%しか増えません。特定技能や技能実習で送り出し国から確保できる業種とは、条件が異なります。
外国人採用は「選択肢を1つ増やす」ことであって、「人手不足を解消する」ことではありません。省力化と定着の設計を並行して進めてください。
外国人だから安く雇えますか
いいえ。労働基準法は国籍を問わず適用され、賃金を理由とした差別的取扱いは禁止されています。
むしろ新任教育20時間の多言語対応や通訳の手配など、日本人採用にはないコストが上乗せされます。詳しくは警備員の外国人採用にかかる費用をご覧ください。
まとめ
- 有効求人倍率6.70倍。全職業1.10倍の約6倍で、求職者の絶対数が足りていない
- 60歳以上が47%、65歳以上34.3%、70歳以上20.9%。全職業の2.5倍の高齢化率
- 令和6年に28名が殉職。女性は7.3%、9%が臨時警備員という構造も直視する
- 国(警察庁)は採用増ではなく省力化(ロボット・DX)を推進している
- 新任教育20時間は、離職者1名ごとに丸ごと失われる。定着の設計が先
- 外国人の現場警備員採用では、まず就労制限のない身分系在留資格等を対象とする。留学生の資格外活動については、個別に入管へ確認する
- 就労制限のない在留資格等を持つ人は約165万人だが、年1.8%しか増えない。継続的な接点と受入体制の整備が必要
警備業の人手不足は、採用努力の不足ではありません。市場構造の問題です。
求人広告費を積み増す前に、省力化できる現場を切り分け、定着の設計を見直し、そのうえで母集団を広げる。この順序で取り組んでください。
外国人採用を、業界を広げて考える
警備業では、警備業務に従事できる在留資格が身分系などに限られ、外国人採用の制約が大きい業界です。一方、飲食・ホテル・小売・ITなどでは、在留資格に応じた採用の選択肢が広く、留学生アルバイトや技術・人文知識・国際業務での正社員採用など、取りうる手段が異なります。人手不足への打ち手として外国人採用を検討する場合は、業界ごとの制度の違いも踏まえて考えると選択肢が広がります。
在留資格に応じた採用ができる業界を見る
自社で採用できる在留資格から、
整理してご案内します
警備業は制度上の制約が大きい業界ですが、業界や職種によって採用できる在留資格は異なります。
「自社の業務ではどの在留資格の人材を採用できるのか」から、まずはお聞かせください。
成功報酬型のため、採用が決まるまで費用は発生しません。
ご相談は無料です。特定技能・技能実習は取り扱っておりません
警備業の外国人採用を、さらに詳しく
外国人採用 実務ライブラリ
出典:警察庁「省力化投資促進プラン ―警備業―」(令和7年12月22日)/警備員等の検定等に関する規則・警備員教育に関する通達/厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」/同「賃金構造基本統計調査」/同「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」(令和8年1月30日公表)/出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(令和8年3月公表)第3表/警備業法(昭和47年法律第117号)第3条・第14条・第21条/出入国管理及び難民認定法 第19条
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度は改正される場合があります。実際の採用にあたっては、出入国在留管理庁または行政書士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
当社について:株式会社HRエージェンシー/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-317049。登録支援機関の登録は受けておりません。
最終更新:2026年7月
監修
HR AGENCY(外国人採用支援サービス)
外国人アルバイト紹介・外国人正社員紹介・外国人採用コンサルティングを提供。首都圏を中心に、企業向けの外国人採用支援を行っています。


