外国人警備員を採用するメリットとリスク|身分系在留資格の前提から解説

警備業の人手不足は、他業種とは質が違います。有効求人倍率は高止まりし、警備員の平均年齢は上昇を続けています。外国人採用を検討する警備会社が増えるのは、自然な流れです。
ただし、警備業の外国人採用には他業種にはない前提があります。警備業務に従事できる在留資格が、極めて限られているのです。この前提を理解せずにメリットだけを見ると、事業許可そのものを失いかねません。
この記事では、警備業法と入管法の条文に立ち返り、メリットとリスクの両方を整理します。

この記事の結論

  • 警備業法に「外国人は警備員になれない」という規定は存在しない
  • ただし警備業務に従事できるのは身分系在留資格の方だけ。約165万人という母集団がある
  • 技人国・特定技能・技能実習では警備業務に従事できない
  • 身分系は就労制限がないため、夜勤も回数制限なく組める
  • 一方で新任教育20時間は免除されず、不法就労助長罪のリスクもある
  • 身分系の母集団は年1.8%しか増えない。採用競争は構造的に厳しくなる

前提:警備業務に従事できる在留資格は限られる

メリットの話に入る前に、避けて通れない前提があります。

まず、最もよくある誤解から解きます。「警備員は日本人でなければならない」という規定は、警備業法のどこにもありません。警備員になれない人の条件は警備業法第14条および第3条第1号〜第7号に列挙されていますが、そこに「外国人」「外国籍」という文言は一切登場しません。

制約となるのは、入管法上の在留資格です。警備業法ではなく、入管法の側で決まります。ここを混同すると、判断を誤ります。

在留資格 警備業務 理由
永住者 可 就労活動に制限がない。日本人と同じ条件で、正社員・アルバイトを問わず雇用できる
定住者 可
日本人の配偶者等 可
永住者の配偶者等 可
特別永住者 可
技術・人文知識・国際業務 不可 警備業務は専門的知識や外国文化に基づく思考・感受性を要する業務に該当しない
特定技能 不可 警備業は特定産業分野に含まれていない
技能実習 不可 警備業務は移行対象職種に含まれていない
育成就労(2027年4月施行予定) 不可 現時点で警備業は対象分野に含まれていない
留学+資格外活動許可 見解が分かれる 明文規定と実務運用にギャップがある。当社は紹介を行っていない

つまり、警備業の外国人採用とは、実質的に身分系在留資格の方を採用することを意味します。他業種で使われる特定技能や技能実習は、警備業では使えません。この点が、他業種との決定的な違いです。

外国人警備員を採用するメリット

約165万人という母集団がある

「身分系しか使えない」と聞くと、選択肢が狭いように思えます。しかし実数を見ると、印象は変わります。

就労制限のない在留資格の人数(令和7年末時点)
在留資格 人数 前年比
永住者 947,125人 +3.2%
特別永住者 266,896人 −2.6%
定住者 226,438人 +1.4%
日本人の配偶者等 152,898人 +1.3%
永住者の配偶者等 56,568人 +5.5%
合計 1,649,925人 +1.8%

在留外国人412万5,395人のうち、約4割にあたる165万人が、就労制限のない在留資格を持っています。日本人と同じ条件で雇用でき、警備業務にも従事できます。

母集団が小さいのではありません。これまで警備業界がアプローチしてこなかっただけです。

夜勤・シフトを制限なく組める

身分系在留資格には、就労時間の上限がありません。留学生の資格外活動(週28時間以内)とは根本的に異なります。

施設警備の夜勤、交通誘導の早朝現場、雑踏警備の休日対応。回数制限を気にせずシフトを組めます。週28時間の管理表を作る必要も、他店との掛け持ちを合算する必要もありません。

警備業は深夜・早朝・休日の稼働が事業の中核です。この点で、身分系在留資格は警備業と相性が良いと言えます。

在留期限の管理負荷が小さい

永住者と特別永住者には、在留期限がありません。定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等には期限がありますが、更新は比較的安定しています。

技能実習の3年、特定技能1号の通算5年といった上限もありません。長期の戦力として計画を立てられます。

年齢構成の是正につながる

警備業は60歳以上が約半数を占める、極端な高齢化業種です。身分系在留資格の方は20代から50代まで幅広く、年齢構成の是正に寄与します。

ただし、これは「外国人だから若い」という話ではありません。永住者は日本での在留歴が長い方が中心です。年齢は個別に確認してください。

外国人警備員を採用するリスク

メリットだけを書く記事は信用に値しません。実務上、必ず発生するコストと管理責任を共有します。

新任教育20時間は、外国人も免除されない

警備業法第21条に基づき、新たに警備業務に従事させる警備員には20時間以上の新任教育を実施しなければなりません。外国人であることを理由とした免除規定はありません。

日本語能力に応じて、教材の多言語化や通訳の手配を検討してください。教育記録の保管義務もあります。

この20時間は、採用コストとして必ず発生します。日本人と同額の人件費に加え、教材整備と通訳の費用を見込んでおいてください。

不法就労助長罪は「知らなかった」では免責されない

出入国管理及び難民認定法 第73条の2(不法就労助長罪)

事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者、外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者、業として外国人に不法就労活動をさせる行為に関しあっせんした者を、処罰の対象とする。

雇用主が処罰対象になります。そして「知らなかった」では免責されません(同条第2項)。在留カードの確認を怠るなど過失があれば、故意でなくとも処罰対象となり得ます。

現行の罰則は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科可)です。さらに、令和6年の改正入管法(令和6年法律第60号)により、5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金へ引き上げられます(2027年4月1日施行)。両罰規定(入管法第76条の2)により、行為者個人だけでなく法人にも罰金刑が科され得ます。

警備会社にとっては、罰金よりも重い結果があります

警備業は都道府県公安委員会の認定を受けて営む事業です。役員が拘禁刑以上の刑に処せられた場合、警備業法第3条の欠格事由に該当し、認定の取消しにつながる可能性があります。事業の存続そのものが問われます。他業種とはリスクの質が異なります。

本国での犯罪歴の確認が難しい

警備業法第3条第1号〜第7号および第14条の欠格事由は、国籍を問わず全員に適用されます。誓約書の取得、健康診断書、住民票(平成24年以降、外国人も取得可能)を整備してください。

ただし、外国人の場合は本国での犯罪歴の確認が難しいという実務上の課題があります。自己申告に加え、可能な範囲で渡航歴・在留歴を確認することが望ましいとされています。

身分系の母集団は、年1.8%しか増えない

これは中長期のリスクです。

身分系在留資格は、外から供給される資格ではありません。長年日本に住み、資格要件を満たした人が積み上がっていく資格です。前年比+1.8%。特別永住者に至っては−2.6%と減少しています。

一方、日本で働く外国人全体は前年比11.7%増(厚生労働省・令和7年10月末)。全体が二桁で伸びるなかで、警備業が使える母集団だけが年2%未満でしか増えない。この差は年々開きます。

早く動いた会社が有利になる構造です

特定技能や技能実習を使える業種は、送り出し国から新規に人材を確保できます。警備業にはそれができません。限られた165万人を、警備業以外の全業種と奪い合うことになります。採用チャネルの構築を後回しにするほど、条件は不利になります。

「留学生アルバイト」は選択肢にならないのか

警備業界で最も見解が分かれるのが、この論点です。

資格外活動許可は、風俗営業等に従事する場合を除いて包括的に付与されます。警備業は風俗営業等に該当しません。したがって条文上、留学生が警備業務に従事することを明示的に禁じる規定は見当たりません。

一方で、実務上は「警備業務は資格外活動として適当でない」との運用がなされているとの指摘もあります。行政書士や社会保険労務士のあいだでも見解が分かれているのが現状です。

不法就労助長罪は、あっせんした者も処罰の対象とします。仮に将来、入管が「資格外活動でも警備業務は可」との見解を明確にすれば、当社は取扱いを開始します。しかし現時点では、企業様と留学生の双方を、判断の分かれるグレーゾーンに置くことはできません。

ご相談をいただいた警備会社様には、身分系在留資格の方の採用をご提案しています。

採用時に必ず確認する3点

① 在留カードは原本を、目視とアプリの両方で

  • 表面の「就労制限の有無」欄に「就労制限なし」と記載があるか
  • 在留資格の種類と在留期限(永住者・特別永住者以外は期限あり)
  • 出入国在留管理庁が提供する在留カード等読取アプリで真偽を確認

コピーや画像では不十分です。偽造在留カードは精巧化しており、目視だけで真正と判断した場合、過失を問われる可能性があります。

② 欠格事由の確認は日本人と同じ基準で

警備業法第3条第1号〜第7号および第14条の欠格事由を、国籍を問わず全員に適用します。誓約書、健康診断書、住民票を整備してください。

③ ハローワークへの届出

雇入れ時・離職時の届出は義務です

外国人を雇い入れたとき、および離職したときは、ハローワークへの届出が義務づけられています(労働施策総合推進法第28条)。特別永住者と「外交」「公用」の在留資格を除く、すべての外国人が対象です。怠ると30万円以下の罰金が科されます。

まとめ

  • 警備業法に国籍要件はない。外国人が警備員になること自体は適法
  • 従事できるのは身分系在留資格の方のみ。約165万人という母集団がある
  • 就労制限がないため、夜勤・シフトを回数制限なく組める
  • 新任教育20時間は免除されない。教材の多言語化と通訳の費用を見込む
  • 不法就労助長罪は過失でも成立。警備会社は認定取消しのリスクも負う
  • 身分系の母集団は年1.8%しか増えない。早く動いた会社が有利になる

外国人採用は、制度を正確に理解したうえで進めれば、警備業の人手不足に対する現実的な解になります。逆に、曖昧なまま進めれば、事業許可そのものを失いかねません。

当社は、判断が分かれる領域について「大丈夫です」とは申し上げません。適法性に疑義のない方法だけをご提案します。

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出典:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(令和8年3月公表)第3表/厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」(令和8年1月30日公表)/出入国在留管理庁「資格外活動の許可(入管法第19条)」/警備業法(昭和47年法律第117号)第3条・第14条・第21条/出入国管理及び難民認定法 第19条・第73条の2・第76条の2/出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」(法律第60号の施行日は一部の規定を除き令和9年4月1日)/労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条

免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度は改正される場合があります。実際の採用にあたっては、出入国在留管理庁または行政書士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

当社について:株式会社HRエージェンシー/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-317049。登録支援機関の登録は受けておりません。

最終更新:2026年7月

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